2015年4月1日水曜日

山田君9

5,6人のヤンキーグループから周りを囲まれて絶体絶命のピンチでした。
”ちょっと財布見せてくれへんか。金貸してえな。”
まるで、ドラマやマンガに出てくるようなわかりやすいカツアゲのシーンでした。

むっちゃ怖かったけど、ここで財布を渡したら終わりだという気持ちで、”財布は持っていない”と必死で訴えました。
実は持っていましたけど。
鎖をもったボス格のヤンキーが、”怪我したくなかったら今のうちにだしや。”と迫ってきます。
泣きそうになっていると、廊下の向こうから

”お前ら何やってんねん!!”

と叫びながら走ってくる人がいます。
そして、

”やめたれや!!”

と一喝して、私の前に立ちはだかり大の字になって盾になってくれたのです。
なんと、山田君でした。

それからどうなったか思い出せません。
おそらく、山田君に怖気付いたヤンキーグループは諦めたのでしょう。

中学を卒業し、高校、大学、社会人となった今、「中学の思い出は?」と聞かれると必ずこの出来事を思い出します。
一度山田君を裏切った私を、5,6人のヤンキーに囲まれている私を、たった一人で危険を顧みずにかばってくれた山田君。
おそらく彼は、勇気や正義と言った高尚な行動原理に基づいて私をかばってくれたのではないでしょう。はたまた、打算的やら損得勘定でもないでしょう。
お腹が空いたから学校を抜けだして菓子パンを買いに行くのと同様に、目の前で”友達”が困っていたから助けたのでしょう。

中学卒業後、山田君とは一度も会っていませんし、何をしているのかも知りません。
もし、会う機会があったらこれだけは言いたい。
”あの時はごめん”


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